紬の着物の種類にはどんなものがあるのか、先染めと後染め 草木染めとは

着物の素材

紬の着物にはどのような種類があるのでしょうか?

紬は本来普段の着物とされてきましたが、
その風格や風合いにファンは多く、
古くから伝え継がれてきた技術は、多くの人に愛されています。

そんな紬の着物で、
日本国内の代表的な産地と言われるところの紬や、
紬の染め方についてまとめてみました。

  

紬の着物の種類にはどんなものがあるのか

紬の種類と特徴とは

かつては、どんなに高価でも紬は普段着でしたが、
今ではお洒落着だけでなく、時には準礼装の着物としても活躍しています。

紬には、あたたかな着心地のものも、ひんやりとした感触のものもあります。

この風合いの違いは、主に繭や糸の紡ぎ方の違いによるものです。

紬は、糸の種類によって、大きく四つに分けられます。

★①
繭をゆでて広げ、
袋状の真綿にしてから紡いだ節のある糸(紬糸)で織り上げた紬。

★②
二匹の蚕が入って作った繭(玉繭)から紡いだ節のある糸(玉糸)で織った紬。

★③
繭から直接糸を引いた生糸で織ったもの。

糸は紬ではなく生糸ですが、伝統的に紬と呼び習わしています。

平織り紬とも言います。

代表的なものに大島紬や黄八丈があります。

★④
蚕が途中で繭を作るのをやめたりして、
生糸市場で引き取られない繭(くず繭)を使った紬、
機械織りの多くの紬

これらの紬は絹布の一種ですが、
まれに木綿の繊維を手で紡いだものもあり、これを綿紬と言います。

紬の種類にはどんなものがあるのか

👘 大島紬
奄美大島での大島紬のはじまりは七世紀頃とも言われます。
江戸時代の大島紬は結城紬と同じ織り方でしたが、
明治時代には高機になり、糸括りに締機が考案され、
やがて糸も紬糸から絹糸に変わりましたが、
大島紬と呼ばれ続けています。

👘 結城紬
茨城県結城市を中心に、
鬼怒川沿い一体の茨城県、栃木県にまたがる地域で、
古くから生産されている紬のトップブランドです。

👘 十日町紬
十日町紬の伝統的工芸品としての名称は、十日町絣として、
絣糸の染め方に特徴がある紬です。

👘 小千谷紬
新潟県小千谷市などで生産されている絹織物で、
伝統的工芸品に指定されています。

👘 塩沢紬
新潟県塩沢地方で織られている絹織物の一つです。
もともと麻織物が盛んでしたが、
江戸時代中期から紬やお召しが織られるようになりました。

👘 六日町紬
塩沢のすぐ隣の駅が六日町で塩沢紬とともに、
六日町で生産する六日町紬も、
塩沢紬の名前で伝統的工芸品に指定されています。

👘 置賜紬(おいたまつむぎ)
山形県米沢市、長井市、白鷹町で生産される織物の総称で、
東北随一の絹織物の産地です。

👘 牛首紬
日本三霊山 白山の麓・白峰地方で織られる絹織物で、
牛首村で織りだされていたためにこの名前が付きました。
牛首村は古くから養蚕や手織り紬の盛んなところで、
平安時代末期から始まったとされますが、
牛首紬が商品化されたのは江戸時代元禄年間からです。

👘 黄八丈
黄八丈と言えば、黄色い格子柄をイメージしますが、
本来は伊豆諸島の八丈島で織られている絹織物の総称です。

👘 信州紬
信州は越後と並ぶ紬の宝庫です。
信州で作られている上田紬、飯田紬、伊那紬、松本紬などを総称して、
信州紬と呼びます。

江戸時代初期、信州の各藩が養蚕を奨励し、
一軒に一紬と言われるほどになりました。

👘 郡上紬
岐阜県郡上市八幡町で織られる絹織物で、
もともと郡上には、平家の落人が野生の蚕から糸を紡ぎ、
植物染めの糸で織った『郡上織り』がありました。
これをもとに昭和二十二年から宗廣力三氏が地域の人々と織り始め、
現在のような風格のある紬として有名になりました。

👘 久米島紬
沖縄にある久米島、そこで織られているのが久米島紬です。
久米島紬は、植物染料と泥で染めた味わい深い色と、
手織りによる素朴な風合いで、日本の紬の最古の味を持つといわれています。
十五世紀に明から養蚕の技術を学んで絹布織りを始めたのをルーツとし、
江戸時代初期に薩摩藩への献納付になったころ、
黄八丈の泥染め技法などを取り入れて、現在の久米島紬が完成しました。

👘 琉球絣(琉球紬)
琉球紬という名前は古くは久米島紬を指しましたが、
今では南風原で生産する琉球紬だけでなく、
首里紬(首里花織とは違って色糸で絣柄を織った紬)などを含めた、
沖縄で産する紬織りの総称として用いられます。
こういった木綿や紬に織りだされた琉球絣は、
日本の絣の原点といわれるほど歴史が古く、
十四世紀頃に中国や南方から伝えられて、独自の発達を遂げた文様です。

これだけでなくまだまだ織られている地域ごとに、
いろいろな紬織りがたくさんあります。

紬の着物に用いる染の種類 先染め・後染めと草木染

『先染め』とは、糸を染めてから布に織ること。

『後染め』とは、布に織ってから、手描きしたり型染めにすることです。

紬と言えば普通は先染めの織物ですが、
最近は紬地の風合いを愛する人が多く、
後染めの紬も多く見られるようになりました。

後染め紬は、紬糸を染めずに白生地に織ってから、
色無地に染めたり、模様付けをして小紋や付け下げ、訪問着にします。

後染め紬の色無地や江戸小紋、
付け下げ、訪問着は紋を付ければ、縮緬や綸子地のそれと同じように、
準礼装のきものになります。

先染めの紬は、表も裏も同じ色柄ですので、
表が汚れたり傷んだりしたら、裏返して仕立て直すこともできます。

紬は、先染めでも後染めでも染料がよく浸透するので、
縮緬のように色抜きがきれいにできない場合があります。

しかし、こっくりとした深みのある色は、
紬ならではの色合いと言えます。

草木染めは、草や木の根、葉、樹皮、花などを煎じて染め液を作り、
石灰や鉄、酸などで媒染して染められます。

草木染は、私たちの祖先が原初から行っていた染色方法ですが、
明治時代にドイツから化学染料が輸入されて、
一時期まったく影をひそめてしまいました。

しかし、昭和二十年代に復活して以来、
多くの染色家たちの手によって草木染が復元され、開発されています。

草木染は、紅花、茜、紫草の根、刈安などの草木から染料を得るもののほか、
貝から取る貝紫や、
虫から取るコチニールなどの動物染料で染めたものも含めて、
草木染めという場合もあります。

草木染は、染料が有機質であるために、
糸の組織深くに浸透して、色に深みが出てきます。

そして、色あせにくいのが特徴です。



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あとがき

紬織りと言われながらも紬糸を使っていなかったり、
織りの着物なのに後染めされていたり、
多様化していくと呼び方がややこしくなってしまいます。

ですが、それだけ試行錯誤し、工夫が凝らされて、
織りや染の技術がますます洗練されて行っている証なのかも知れません

技術がさらに発展し、
新しい織りや染の技術が開発されていくことを願いますが、
そのためにも需要を増やす必要があるのでしょうね。