着物の種類の見分け方で、
付け下げと呼ばれるものは、どういう着物のことをいうのでしょうか?
訪問着と付け下げ訪問着はどう違うのか、
わかりにくいですよね。
付け下げ、訪問着、付け下げ訪問着、そして付け下げ小紋、
それらの違いを、
仕立てる前の状態・柄付け・八掛・用途について、
どのように違うのかをまとめました。
着物の種類の見分け方 付け下げとは何?
付け下げは訪問着よりも歴史が浅く、
訪問着を作るためには非常に時間がかかることから、
手間をかけずに済むよう、
仮仕立てしなくても、
バランス良く反物の模様が配置されるような着物が作られるようになりました。
ウィキペディアには、
『女性用の和服で、訪問着を簡略化した染めの着物』とあります。
これが付け下げです。
元々は訪問着よりも格下とされていたのですが、
柄の華やかさや紋の有無によって訪問着と同格として着られるものもあります。
【仕立てる前の状態】
基本、付け下げは反物として巻かれた状態で販売されています。
仕立てるときに切る(裁断する)位置には墨うちと言って、
印がされています。
長い一反の生地に、袖が2枚、見頃が2枚、衿衽が1枚で、
その衿衽から本襟とかけ襟、衽が2枚取れるようになっています。
袖は右袖と左袖、見頃は上前の身頃と下前の身頃の2枚で、
それら全部が繋がった状態になっています。
【柄付け】
縫い合わすところに柄が来ないようになっているので、
そのため訪問着より無地場が多くなります。
「振り違え」と言って、
左袖の前側と右袖の後ろ側に柄のポイントがあります。
訪問着に近い柄ゆきのものは付け下げ訪問着と呼ばれる場合もあります。
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【八掛】
付け下げとしては、共八掛はありません。
八掛に同色を選ぶことができます。
共八掛が付いているものは、付け下げ訪問着の場合が多いです。
【用途】
色や柄行によって、
友人の結婚披露宴やパーティーから、クラス会や茶会、
他家への訪問、観劇など、
正式な場や少しあらたまったお出かけの時に着用します。
柄が多い方が格が上ということはありませんが、
柄付けが簡単なものは、
あまり重たい印象はないので、オシャレ着や街着として装います。
今現在『付け下げ』といった場合、
ほとんどが付け下げ訪問着のことを指しているようです。
着物の種類の見分け方 付け下げ小紋とは?
付け下げの柄付けに、
付け下げ小紋というものがあります。
【仕立てる前の状態】
付け下げと同じく、付け下げ小紋も反物として巻かれた状態で販売されています。
仕立てるときに切る(裁断する)位置には墨うちと言って、
印がされています。
長い一反の生地に、袖が2枚、見頃が2枚、襟衽が1枚で、
その襟衽から本襟とかけ襟、衽が2枚取れるようになっています。
袖は右袖と左袖、見頃は上前の身頃と下前の身頃の2枚で、
それら全部が繋がった状態になっています。
【柄付け】
小紋柄を染め上げたもので、小紋と付け下げが合わさった感じです。
見頃は肩山、袖は袖山で切り替えて、柄の向きの上下が整うようになっています。
襟は本襟とかけ襟の中心で柄の向きが変わります。
格でいうと小紋と同格になりますので、
わりとカジュアルな位置づけです。
小紋は全体柄で、送り柄(一方方向に柄が送られている)の場合が多いのですが、
肩で柄の向きが切り替えられているものを、付け下げ小紋と言い、
小紋より上等(おしゃれ)なものです。
【八掛】
よりおしゃれなものは、表と同じ柄の八掛を用いることもありますが、
好みの色の八掛を用いることが多いです。
【用途】
付け下げ小紋は、手の込んだ作りですが、
よそ行きではなく、街着やオシャレ着、普段着として着用します。
着物の種類の見分け方 訪問着とは何?
訪問着ができたのは、以外にもそれほど古いことではないのです。
明治になり、海外との文化交流が盛んになったころ、
日本の女性も外交に一役買っていたのですが、
その女性たちが、外国の女性が着ているビジティングドレスを見て、
それに相当する着物をということで訪問着が作られました。
白生地を仮絵羽にして模様を描き、解いて染め、
また仕立てると言う、絵羽模様になった裾模様の作り方が、
訪問着の定義となり、今に至っています。
現在の訪問着は、
染上がった仮仕立て状態で販売するのが一般的となっています。
【仕立てる前の状態】
訪問着は、白生地をキモノを仕立てるときのように裁断し、
仕立てるときと同じところを仮縫いして、着物の形を作り、
そこに青花で下絵を描いて、それを解き、
反物のような長い状態にしてから、染める工程へ入ります。
染の工程が仕上がり、後加工(刺繍や箔置きなど)がすんだら、
もう一度仮縫いの状態にされます。
【柄付け】
訪問着は着物を広げた時に、
裾模様が縫い目をまたいで1枚の絵のように繋がっていて、
このつながった模様のことを「絵羽」と言います。
上前の前衽から前身ごろ、さらに後ろ身頃から下前の身頃から衽へと、
裾まわりの柄が全部絵羽に繋がっています。
訪問着は袖付けや衿から胸元にかけて、
また、肩から背中にかけてなど、上半身にも繋がった模様があるのが特徴です。
【八掛】
同じ生地、同じ色柄が染められた共八掛が付いています。
【用途】
振袖や留袖(黒留袖も含む)は礼装ですが、
訪問着はそれに続く準礼装です。
身内や親族として結婚式に列席する場合は、
留袖(黒留袖も含む)が適しています。
訪問着は、友人の結婚式の披露宴やパーティー、クラス会や茶会、
他家への訪問、観劇など、
正式な場や少しあらたまったお出かけの時に着用します。
一つ紋をつけておくと、さらに格が上がります。
お子様の入学式や卒業式などの式典にも相応しい装いです。
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着物の種類の見分け方 付け下げ訪問着とは何?
付け下げ訪問着は、訪問着のように、
上前の衽と上前身頃の模様が縫い目でつながるように改良された柄付けの着物で、
言わば、訪問着のライトバージョンといったところです。
【仕立てる前の状態】
基本、付け下げ訪問着も訪問着ですが、付け下げですので、
反物として巻かれた状態で販売されています。
仕立てるときに切る(裁断する)位置には墨うちと言って、
印がされています。
長い一反の生地に、袖が2枚、見頃が2枚、衿衽が1枚で、
その衿衽から本襟とかけ襟、衽が2枚取れるようになっています。
袖は右袖と左袖、見頃は上前の身頃と下前の身頃の2枚で、
さらに共八掛の部分も含めて、
それら全部が繋がった状態になっています。
【柄付け】
上前の前見頃の部分と、上前衽の柄が、
合わせられるようになっているのが、付け下げ訪問着の特徴です。
模様の位置で考えると訪問着と似ていますが、
着物全体が絵羽模様にはなっていないので、
訪問着よりも模様が控えめで地味な着物になります。
【八掛】
同じ生地で同じ色柄の八掛が付いています。
【用途】
準礼装に近い着物で、
訪問着とほぼ同格のものとされます。
紋が入ればさらに格は上がりますが、
紋が入ると、街着としてはふさわしくなくなります。
お子様の入学式や卒業式にも良いでしょう。
付け下げ訪問着は、仕立て上がってしまうと、
少し柄の控えめな訪問着という感じで、
見分けは付きにくくなります。
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あとがき
付け下げ、訪問着、付け下げ訪問着、そして付け下げ小紋、
これらの違いが分かりにくいと言われます。
それもそのはず、違いの線引きが曖昧なのです。
でも、だからと言って着るのを躊躇しないでください。
基本を外さず、着ることを楽しむことです。