着物の種類の見分け方 仕立て方・素材・織り方・染め方・色・柄・柄付け

着物の種類

『きもの』と、ひと口に言っても、着る物という意味では広すぎます。

衣服全般としての着る物には洋服も含まれますが、
ここでは和服に限ってということで考えていきます。

日本の着物、つまり昔から日本人が着てきた着る物という意味においての、
『きもの』について考えます。

着物の分け方では、女性もの、男性もの、子供用のものに分かれ、
それらは用途別に分けることが出来ます。

その着物を着る人の年齢や立場によっても分けられ、
着用する場面によっても違ってきます。

着物自身の格と、柄の付け方による格があり、
着物の仕来りと言われる決まりごとの中にも格があります。

着物の種類の見分け方では、
仕立て方・生地の素材・生地の織り方・染め方・色・柄・柄付けという、
きものの特徴別に分類し、それぞれの特徴をまとめてみました。

  

着物の種類の見分け方 仕立て方

着物の仕立て方は、女性用、男性用、子供用で、寸法も形も、
もちろん仕立て方も違ってきます。

またそれらは、着用する季節によって、
単衣もの、袷もの、薄物という仕立て方があります。

女性用の着物は、身丈を長く作り、
おはしょりを取ってからげて着付けます。

男性用の着物は、肩から裾まで、
その人の身長にあった対丈に仕立てます。

子ども用の着物は、成長の変化が激しいので、
裄丈や着丈が簡単に合わせられるように、
肩揚げや腰上げを作ることで調節できるように仕立てます。

着物の種類の見分け方 生地の素材

生地の素材というのは、その生地を織っている糸のことですが、
おおまかに分けて、絹、木綿、麻、毛、そして化学繊維です。

【絹】

蚕の繭からとった動物繊維で、
蚕が体内で作り出すたんぱく質・フィブロインを主成分としてできています。

繭を製糸し、引き出した極細の繭糸を数本揃えて、
繰糸の状態にしたままの絹糸を生糸といいます。

また、生糸をアルカリ性の薬品で精練して、
セリシンという膠質成分を取り除き、
光沢や柔軟さを富ませた絹糸を練糸といいます。

絹の生産は紀元前3000年頃の中国で始まっていたとされていますが、
一説には紀元前6000年頃ともいわれています。

少なくとも前漢の時代には蚕室での温育法や蚕卵の保管方法が確立していて、
現在の四川省で生産が始められていたといいます。

日本にはすでに弥生時代に絹の製法は伝わっていて、
絹織物の生産が盛んになっていました。

当時の日本の繭は、
真綿の生産にしか用いる事が出来ないほど劣悪なものが多く、
西陣や博多などの主要絹織物産地では、
中国絹が原材料として用いられていました。

鎖国が行われ始めた寛永年間から国内での品質改良が進められ、
江戸時代中期には日本絹は中国絹と遜色がなくなりました。

日本の生糸生産量は、二十世紀に入った頃には世界最高となり、
生糸は明治・大正と日本の主要な外貨獲得源でした。

しかし、1929年以降の世界恐慌では、
世界的に生糸価格が暴落し、
第二次世界大戦では諸外国との貿易が途絶えたため、
日本の絹生産は衰退し、現在は主に中国からの輸入に頼っています。

《利点》
軽い。丈夫。

《欠点》
家庭での洗濯が困難(水に弱いため)。汗によりしみになりやすい。
変色しやすい。虫に食われやすい。日光で黄変する。値段が高い。

【木綿】

ワタの種子から取れる繊維のことで、
木綿はワタの種子の周りに付いています。

主成分はセルロースでできていて、繊維としては伸びにくく丈夫であり、
吸湿性があって肌触りもよいのが特徴です。

このため、下着などによく使われる繊維ですが、
縮みやすいという欠点もあります。

綿花の栽培には熱帯から亜熱帯にかけての湿潤・半乾燥地帯で、
大規模な綿花栽培が行われるようになってきています。

木綿栽培の最古の証拠はメキシコにあり、約8000年前に遡ります。

また、最も古い木綿栽培の痕跡は、
約7000年前(紀元前5千年紀から紀元前4千年紀)のもので、
インド亜大陸の北西の広大な領域で発達した、
インダス文明の住民によるものでした。

日本へは799年(延暦18年)、
三河国に漂着した崑崙人(インド人)によってもたらされ、
栽培が開始されたが、1年で途切れました。
この崑崙人は各地を廻り、栽培法を伝えたとされています。

結局、綿は輸入に頼ることになり、長い間高級品でした。

日本で栽培され一般的になるのは16世紀以降で、
戦国時代後期からは全国的に綿布の使用が普及し、
三河などで綿花の栽培も始まり、江戸時代に入ると急速に栽培が拡大しました。

各地に綿花の大生産地帯が形成され、
特に畿内の大阪近郊などにおいて生産が盛んになっていきました。

木綿と合成繊維が本格的に競合するようになったのは、
1950年代になってポリエステルが出回るようになってからのことです。

1960年代にはポリエステルを使った衣類が急激に広まり、
木綿輸出に依存していたニカラグアなどで経済危機が発生し、
安い合成繊維と競合することでニカラグアでは、
木綿生産額が1950年から1965年の間に10分の1に低下しました。

木綿生産量は1970年代に回復しはじめ、
1990年代初めには1960年代以前のレベルに戻りました。

《利点》
肌触りが良い。吸水性が良い。熱に強くて丈夫。アルカリに強い。
水に濡れることで強度が増し洗濯に強くなる。染色性や発色性に優れている。
吸湿性が良い。染色性が良い。通気性が良く涼しい。厚手にすれば温かい。
価格が安価なものが多い。

《欠点》
皺になりやすい。乾きが遅い。強い酸に弱い。
水に濡れると地の目方向に縮む(一旦縮むとそれ以上は縮まない)。
長時間日光に当たると黄変する。

【麻】

植物表皮の内側にある柔繊維または、
葉茎などから採取される繊維の総称です。

これらの繊維は光沢と通気性があり、
肌触りの良さから夏物の衣料品や寝装具などに用いられることが多く、
日本では和装の夏用の衣料に適していて、
麻織物(麻布)として古くから重宝されてきました。

麻と苧麻共を原料にした麻織物の上級品は上布とされ、
近江上布・奈良晒・越後上布・宮古上布などがあります。

《利点》
通気性が良い。吸水性がある。光沢がある。引っ張りに強い。
水に濡れることで強度が増し洗濯に強くなる。

《欠点》
しわになりやすい。水に濡れるとよりしわになる。カビに弱い。
摩擦や水に濡れた状態で毛羽立ちやすい。硬く伸縮性がない。
繊維が固く、肌にチクチクとした刺激がある。保湿に乏しい。
濃い色は透けやすい。

【毛(ウール)】

羊の毛=羊毛(ようもう)のことで、動物繊維の一種です。
羊毛を用いた糸やや織った布もウールと呼ばれます。
一般的には羊の毛を指しますが、
アンゴラ・アルパカ・ラクダの毛も含まれます。

ウールの主成分はタンパク質の一種であるケラチンです。

羊の毛で織られた「ウールの着物」は、
天然素材でしわになりにくく、お手入れもしやすいため、
普段に着る着物としてはとても着心地がよいきものです。

昭和中期にブームがありましたが、
現代では新しいウール着物はほとんど作られていません。

《利点》
肌触りが柔らかい。油分を含み、撥水性があって、濡れても保温性がある。
野外での着用に適する。通気性がありながら防寒性と保温性が高い。
多くの空気を含むため断熱性が高い。冬服や寝具(毛布)に適する。
しわになりにくい。他の繊維よりは燃えにくい。

《欠点》
洗うと縮む(クリーニングはウールの油分が奪われることもある)。
擦れたり、アイロンは当て布をしないと光る。虫の害を受けやすい。
通気性が高い反面、防風性が低い。磨耗に弱い。
人によっては触るとちくちく感じる。アルカリに弱い。日光で黄変する。

【化学繊維】

化学繊維とは、石油などから化学的に作られた繊維ということで、
合成繊維が次々と開発され、産業化されていきました。

化学繊維は人造繊維とも呼ばれ、その中には、
★天然繊維(天然高分子)を原料にして製造される再生繊維

セルロース系再生繊維 – レーヨン、キュプラ、ポリノジック

レーヨンは天然セルロースからできているので、
合成繊維ではなく人造繊維になります。

人造繊維は1890年代にフランスで開発されたレーヨンから始まり、
製造工程は複雑化していますが、天然繊維より安価でした。

★天然高分子を改質して製造する半合成繊維、

セルロース系半合成繊維 – アセテート
アセテート繊維は1924年に開発されました。

タンパク質系半合成繊維 – プロミックス

★純合成的に有機高分子化合物を製造する合成繊維、

ポリエステル系合成繊維
ポリアミド系合成繊維 – ナイロン
石油化学による最初の合成繊維はデュポンが1936年に開発したナイロンです。

★無機化合物からなる無機繊維

ガラス繊維
炭素繊維

着物の種類の見分け方 生地の織り方

生地は糸を絡めることで平面にした布のことで、
絡め方の方法は『織る』と『編む』で、
和服の素材として使われる物の多くは織られた生地です。

この織りの組織と言われる物には『織りの三大組織』と言われる、
平織り、綾織り、繻子織の3種類です。

『平織り』

『平織り』は、
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を、
一本ずつ交差して交互に浮き沈みさせて織る、
最も単純な織物組織で織られた生地のことです。

丈夫で摩擦に強く、
織り方も簡単なため、広く応用されています。

木綿のものでは、浴衣地、金巾、キャラコ、ブロード、
絹物では、御召、縮緬、縮、塩瀬、羽二重、紬、銘仙
麻を用いたものでは、上布、小千谷縮、
毛織物では、ウールシャンタン、ポーラ、モスリン、

夏の薄物に『絽』という着物があります。

絽は、平織りの織り方の中で、
7・5・3本おきに横糸に2本の縦糸を交差させて織っていく、
綟織り(もじりおり)のことで、
織り上がったものはそれぞれ七本絽・五本絽・三本絽と呼ばれます。

『綾織り』

『綾織り』は、
斜文織ともいわれる織り方で、
経糸が2本もしく3本の緯糸の上を通過した後、
1本の緯糸の下を通過することを繰り返して織られもので、
生地の表面には経糸の出る割合が多くなります。

摩擦に弱く強度に欠けるが、地合は密で柔らかく、
伸縮性に優れ、シワがよりにくい等が利点です。

『繻子織』

『繻子織』は、
経糸・緯糸とも五本以上から構成され、
経・緯どちらかの糸の浮きが非常に少なく、
経糸または緯糸のみが表に表れているように見える織り方です。

密度が高く生地は厚いのですが、斜文織よりも柔軟性に長け、
光沢が強くありますが、摩擦や引っかかりには弱いという弱点があります。

本しゅす、ドスキン、綿朱子、緞子、綸子などがあります。

着物の種類の見分け方 染め方

着物の染め方で、糸を染めてから織るものを『先染め』、
白生地に織りあげてから染める物を『後染め』といいます。

染める染料には、
化学染料や天然染料を使った草木染などがあります。

『先染め』

先染めの着物は、織りの着物と言われ、
街着やおしゃれ着、普段着などに用いられます。

糸を染めるとき、柄を作るために、
絣括りや締端で防染をして糸を染める織りの着物もあります。

大島紬や久留米絣などが有名です。

『後染め』

後染めの着物は、多彩な色や柄に染められ、
礼装から普段着まで、用途は幅広く用いられます。

染めの技法には、
天平時代から伝わり『天平の三纈(さんけち)』と言われる技法、
蠟纐(ろうけち)…ろうけつ染め
纐纈(こうけち)…絞り染め
夾纐(きょうけち)…板締め染めのほか、

手描き友禅、型友禅、捺染、浸染、注染などいろいろあります。

京友禅、加賀友禅、江戸小紋、鳴海絞

着物の種類の見分け方 色・柄・柄付け

【色】

日本の伝統色には、その色をうまく言い表しているような、
とても素敵な名前が付いていて、
微妙な色合いにもそれぞれを言い表す色名があります。

それほど日本人が色に対する感覚に鋭く、
感性が強いということだと思います。

自然と深くかかわって生活してきた日本人の、
繊細な美的感覚が生み出した色は、
現代の着物の中にも連綿と受け継がれています。

【柄】

模様や柄にも日本人の深い感性は活かされています。

有職文様や正倉院文様といった格調の高い文様や、
吉祥文様と言われるおめでたい文様から、
七宝・青海波・紗綾型・松菱・霰・霞・流水・扇面など、
また、生活道具なども模様にしたり、
四季の花々、動物や虫も模様になっています。

そのほか、幾何学模様や、幾何学模様の連続模様、
縞や格子とその組み合わせなどがたくさんあります。

【柄付け】

黒留袖や色留袖に用いられる模様は、吉祥文様などのおめでたい模様を、
前身頃の立褄から見頃の裾全体に繋がる裾模様が配されています。

訪問着や振袖には、
裾や上半身にも全体に繋がる模様が配されている絵羽になっていて、
留袖や訪問着、振袖には共八掛が付いています。

付け下げや付け下げ小紋の柄は、肩山で切り替わっていて、
柄の向きが揃っています。

付け下げには、裁断する場所に墨うちという印がしてあり、
柄の位置が決まっていて、反物で売られています。



あとがき

着物の種類は、柄付けや工程の違いによって、
様々な種類に分けることが出来ますが、
たくさんあり過ぎて、ちょっと難しいですね。

でも、種類がたくさんある分だけ、
着物はたくさん楽しめる装いだということですね。