加賀友禅の歴史とは?絵付けの特徴や色彩と京友禅との違いは柄と技法?

染め

友禅の着物を見て、これは京都?それとも加賀?って訊ねられます。
京友禅の特徴と加賀友禅の特徴がわかれば、
加賀友禅の京友禅との違いがよくわかります。
でもどちらも長い歴史と素晴らしい技術を持った、
伝統工芸であり、伝統文化。
そして美しい着物です。

加賀友禅の歴史とは?

加賀友禅の歴史は、
今からおよそ五百年前、加賀の国独特の染の技法であった、
無地染めの『梅染』に端を発します。

前田利家によってはじまった加賀藩は、
日本一の禄高百万石でよく知られていますが、
同時に、武力ではなく文化面で江戸と京都に勝るとも劣らない力をもって、
独特の文化を生み育てました。

加賀友禅や九谷焼をはじめ、
加賀象眼や加賀蒔絵などの美術工芸が花を咲かせ、
加賀宝生(能楽)や茶道、舞踊などが市民生活に根を下ろし、
現代に伝えられています。

こうした加賀百万石文化を生み出すのに特別熱心だったのは、
三代藩主・利常と、五代藩主・綱紀でした。

とりわけ松雲公とも呼ばれた名君・綱紀は、
多数の名工学者などを京都等から招いて金沢に集め、
美術工芸や芸能文化の振興を図りました。

こうした文化的背景の中で、
素晴らしい加賀友禅も育てられたのです。

と言っても、
加賀友禅はいきなり生まれた物ではなく、
加賀の地方には友禅染の母体となった染色工芸が存在していたのです。

今から五百年余り前、
既に加賀の梅染と呼ばれる無地染めがありました。

梅の皮や渋で布地を染め、黄味がかった赤色になりますが、
回数を重ねて染めると赤くなり(赤梅染)、
さらに何度も繰り返すと黒色に染まります(黒梅染)。

加賀の守護富樫氏から加賀絹(小松地方で織られた最高級品の絹)と、
梅染が献上された記録が残っています

こうした無地染に加えて、模様染の技術も発達し
加賀兼房(兼房染)や、加賀紋(色絵紋)などのお国染(加賀染)がありました。

これは当時としては素晴らしいもので、
遠く離れた琉球の染色と軌を一にしているのも不思議です。

その頃、京都にも茶屋染が出現しており、
日本を代表する模様染である加賀友禅と京友禅と沖縄の紅型の原型が、
ほぼ同時期に生まれているというのは興味深いところです。

加賀染の特色は、臈纈のロウに代わって一陣糊を使ったことで、
箸や楊枝に糊を付けて模様の糊置きをしたものらしく、
精巧で美しい模様(おもに環状の丸紋花模様が多かった)が、
人気を呼びました。

利常に招かれた久隅守景
(狩野探幽の弟子で、加賀に来て九谷焼や漆器や染色にも絵を描いた)が、
加賀染にも関与したらしいと言われています。

さて、いよいよ宮崎友禅斎が登場するわけですが、
詳しいことは明確ではなく、
もともと加賀(または能登)の人とも、京の人とも云われていますが、
定説とまでなっていません。

はっきりしているのは、宮崎友禅斎(この名前もいろいろ呼び方がある)は、
傑出した画工(初めは扇に絵を描いていた)であり、
34歳ごろから京都で染色にも携わって、
新しいデザインで革新的な模様染を発表し、
友禅染の名で知られるようになったことです。

金沢へは60歳代(享保3~4年)に移り住んで、
すでに高い技術を持っていた染色業界にデザイナーとして登場し、
素晴らしい加賀友禅の基盤を打ち立てたのでした。

友禅斎の世話をした加賀藩御用紺屋・太郎田屋が能登穴水の出身ということもあり、
同郷人ともいわれますが、
これも確証はなく、どうして京都から金沢へ来たかも定かではありません。

とにかく友禅斎の才能がこの地で花開き、
大胆な構図と素晴らしい作風を発揮して『加賀友禅』の名声をもたらしたのでした。

この伝統は情緒と人情豊かな金沢の街にマッチして、
優れた作家や作品を生み出し、
現在も、人間国宝・木村雨山氏を頂点に、
数多くの作家や業者が受継ぎ、後継者である若い人たちも活躍しています。

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加賀友禅には、京友禅と同じく、手描き友禅と型友禅があります。

手描き友禅の特徴
加賀友禅の制作工程は主な工程だけで9つあり、
そのすべての過程で熟練の技術が求められます。

一点一点、根気と時間をかけて仕上げられる手描き友禅は、
それゆえに高い価値を誇ります。

板場友禅の特徴

板場友禅は模様を彫った型紙を使って染める手法で、型友禅や加賀小紋染とも呼ばれています。
高度な技による精緻で繊細な模様は、手描き友禅とは違った魅力と風合いで親しまれています。

加賀友禅の色彩の特徴

加賀五彩とは、藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色で、
加賀友禅の基調になっているといわれます。

現代の加賀友禅作家は、
加賀五彩に基づきながらも時代の好みや作家自身の個性を反映させて、
全体の配色を決めています。

加賀友禅の特徴 外ぼかし

ぼかし染は彩色等の際用いられる技法で、
ただ均一に染めずに濃淡(グラデーション)をつけて染められます。

一般に加賀友禅では、
外ぼかしといって柄の外側から内側へ向かってぼかしていきます。

中には「三色ぼかし」といって木の葉の一部が枯れたり、
紅葉したりしている様子を三色で表現する技法もあります。

加賀友禅の特徴 虫食い

虫食いは、木の葉が虫に食われた様子を表現したもので、
現実感を出しつつ、柄のアクセントとして微妙な美しさを表現しています。

加賀友禅の特徴 加賀友禅作家

加賀友禅作家とは
加賀染振興協会に落款を登録している加賀友禅技術者です。

加賀友禅作家になるためには、
工房を営む師の下で7 年以上の修行を積んでふさわしい技量を身につけ、
同協会の会員2 名(師匠ともう1 名)の推薦を得て、
協会の会員資格を得る必要があります。

加賀友禅作家が制作したきものには、必ず作家の落款がしるされています。

落款制度は伝統工芸品である加賀友禅の品質の証であるとともに、
作家の誇りの表れでもあります。

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加賀友禅と京友禅との違いは柄と技法?

日本で、今のような装飾性の高い着物が発達したのは、
奈良時代の錦織や綾織り、綴れ織りなどの織物と、
天平の三纈(さんけち)といわれる、
臈纈(ろうけち)・纐纈(こうけち)・夾纈(きょうけち)の、
染め物から始まったものです。

平安・鎌倉・室町など、中世戦乱の世相で、大きな進展もなく、
桃山時代に入ってようやくその発達が見られたのです。

江戸時代に入り、その初期には琉球の紅型や京の茶屋染、
加賀の加賀染が生まれ、
やがて中期の江戸文化華やかな頃、
宮崎友禅斎の活躍によって、これらの模様染が基礎となり、
友禅染が作り出されました。

その優れた染絵法が、京と金沢にそれぞれ定着し、発展を遂げ、
今に至っています。

一般的に加賀友禅と京友禅の違いが言われているのは、
その模様の構成(柄)と色彩なのです。

加賀友禅の模様は小さくまとまっていて、
外側から内側に向かってボカシが使われていますが、

逆に、模様が大きく、
内側から外側に向かってボカシが使われているのが、
京友禅だといわれています。

加賀友禅の特徴ではこのほかに、
虫喰いや
花びらを一枚ずつ交互に違う色彩でボカシ、
その色の組み合わせに、いわゆる加賀友禅五彩と呼ばれる、
蘇芳(すおう)・黄土(おうど)・藍(あい)・緑(みどり)・墨(すみ)などの、
多彩が使われます。

また、その発達の背景には、
京都の公家や豪商向けの絢爛な好みと、
金沢の武家好みの落ち着いた品のある美しさが要求されて出来た違いがあります。

絵の構図では、加賀友禅は絵画調ですし、
京の茶屋染は、紅型のように集合配列模様で、
加賀のように多彩ではなく淡青単彩風でしたが、
これなどは今日、ほとんど差異が見分けられないようです。

また現在のように比較をするならば、
加賀友禅の生産規模は京都より小規模で、
むしろ量より質の高級品として評価されている面が強いようです。

また京友禅では各工程別にそれぞれ分業されていますが、
加賀友禅では、手描き友禅作家が一点ずつ、その作品の模様を構成し、
色彩の配置や具合なども考えながら、下絵・彩色などを行っていきます。

さらに、糊置きという工程だけが分業され、
専門家が携わるのですが、
最近では、模様師みずから糊置きをする場合もあります。

そのほか、糊伏せや地染め、水洗い、蒸し、湯のしなどは、
分業工程であることは変わりませんが、
使用する糸目糊が、加賀では糯米糊が昔のまま使われ、
その特性を大事にしようとしています。

京都では合成糊を使用して画一的なところで利点を見出そうとしているのも、
違いの一つなのです。

加賀友禅が最も重視しているのは『染』という点で、
染をもって模様を表現したいということから、
刺しゅうや箔を上加工として使用することを極力控えているという点があります。

以上、京友禅と加賀友禅の違いを上げましたが、
その本当の区別は通人といえどもなかなか難しく、
簡単にはできないと言えます。

友禅は友禅として今日の着物を表すにふさわしい、
無形の文化財といえるのです。

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あとがき

加賀友禅の良さは、素晴らしいのに主張せず、
美しいのに控えめなところでしょうか。
加賀五彩の色目には嫌味がなく、写実的な柄行は飽きが来ません。
何度も着ていても『また着たはるぅ~!』って言われないので、
ついつい着てしまいます。