藍染の原料になる植物は何?その種類や産地と染料にはどんな効果がある?

染め

藍染めの原料となる植物 藍は、
タデ科イヌタデ属の一年生植物で、
別名をタデアイ、アイタデとも言います。

藍は中国東部、朝鮮半島、日本列島中央部において、
青色の染料として重用されていましたが、
化学合成したインディゴ染料が発明されて以降は、
合成インディゴが工業的にはよく用いられているため、
染料用途で用いられることはあまりなくなりました。

藍染めとは、その藍を染料として用いた染物で、
藍染は薄い段階では緑みを帯び、
濃くなるにつれ、紫みを帯びることが特徴です。

藍染のマスクがあるのをご存じですか?

藍を使って藍染めを行った布には、
消臭効果、細菌の増殖を抑制する効果、
虫除け効果などがあると言われています。

藍染の原料になる植物は何?

アイ(藍)とは、
藍染の原料となるタデ目タデ科イヌタデ属アイ種の
非耐寒性の一年生種子繁殖作物です。

日本へは奈良時代に中国から渡来しました。

枝は上部でよく分枝します。

夏~秋、茎の先端に穂状花序を伸ばし、
米粒大の薄紅色の小花を多数咲かせます。

花後、黒褐色のそう果を付けます。

藍染めの原料とする場合は、
花が咲く前に全草を刈り取り、
葉を生のままか藍玉にして発酵させて使います。

その他の用途として、
虫刺されの薬草や、鑑賞用、料理にも使われます。

庶民の染料として、大量に作られていた日本の天然藍も、
江戸時代末期には色素含有量の多いインド藍が輸入され

明治になると、
ドイツで開発された合成インジゴの輸入も増えたため、
その生産量は激減しました。

また、第二次世界大戦でその栽培が禁止されたために、
藍の生産は途絶える寸前までになりました。

しかしながら、
徳島の藍師が、戦争中も種を守り、
副業をしながらも藍作りを続けきたことで、
現在でもその伝統が生き続けています。

ヨーロッパのウォードが今世紀の初めに途絶えたのとは対照的です。

そして、人々の生活が豊かになったことで、
天然染料による染色が見直され、
手作り独特の暖かさを人が求めだしたということで、
藍も見直されています。


・インディゴとはどう違うの?

ジーンズの色としておなじみのインディゴ。

藍とはどのように違うのでしょうか?

西洋で用いられていた青藍の染料は
主にインドから輸入されるインディゴでした。

インディゴは水に溶けないため、
16世紀のヨーロッパの染物屋は苦労したようです。

19世紀にドイツでインディゴの化学合成に成功すると、
やがて工業生産されるように。

天然よりも合成品のほうが、
不純物がないため鮮やかに染まります。

ジーンズが開発されるとアメリカにもわたり、
大量生産されるようになりました。

藍染めとは異なり、
着古したり、洗濯するたびに色褪せる欠点は、
若者にはかえって魅力でした。

これにより天然インディゴはほぼ壊滅。

ヨーロッパの伝統的な藍染め技法も今では見ることができません。

藍色、紺色、浅葱色…藍四十八色という言葉があり、
明治時代に日本を訪れた外国人から
ジャパンブルーとも呼ばれたほど、私たちにとって特別な色、藍。

決して声高に主張するわけではないのに、
生活のどのシーンにもすっとなじみ、
なんだか
とっても存在感がある。とても魅力的ですよね。

藍染の原料になる植物の種類や産地は?

・阿波藍(徳島県)

平安時代初期から始まったといわれています。

日本三大暴れ川でもある吉野川。

その恵みである肥沃な土地に、上質な藍がよく育ったそうです。

ここで作られた藍染には絶対必要な「すくも」が、
江戸や大阪に運ばれました。

徳島県のすくもは、最高級品と言われます。

・伊達の藍(北海道)

明治7年に、徳島県から伊達市に入植した人たちが、
藍を栽培して始まったといいます。

水を好む藍ですから、
やはり長流川や紋瞥川、牛舎川など川のそばに作付され、
北海道一の藍の産地となりました。

・益子木綿(栃木県)

益子町にある、
江戸時代に創業された日下田紺屋(ひげたこうや)が有名です。

72基もの藍甕(あいがめ)が備えられた藍染め場は、
1996年県の有形文化財にも指定されています。

益子木綿自体も、
無形文化財に指定されています。

益子町は、陶芸の益子焼でも有名です。

・近江木綿(滋賀県)

湖南市にある、
明治時代に創業された紺喜染織があります。

技術は京都から伝わって、
最盛期は大正時代だったようです。

・出雲織(島根県)

オリジナルデザインに定評のある出雲織です。

倉吉絣、広瀬絣、弓浜絣の影響を受けたといわれています。

・久留米絣(福岡県)

200年程前から作られたといわれています。

白糸をくくって染め、それを織る技法は
12歳の少女が思いついたといいます。

深い藍色が特徴です。

天然藍の藍染、手織りの久留米絣は国の重要無形文化財、
国の伝統工芸品にも指定されています。

・琉球藍(沖縄県)

琉球王朝の時代から、
沖縄北部の本部町伊豆味集落に伝わっている藍です。

琉球織物の紅型(びんがた)にも使用されています。

そして、藍の色には種類があります。

浅葱(あさぎ)

浅葱は、藍染めの浅いところから現れる色で
葱の色に似ていることから浅葱といわれています。

縹(はなだ)

古くから知られた藍染めの色名のひとつで、
正色として五色の青に対応された色でもあります。

カチ色
褐色(かちいろ)

活・勝・捷などの字をあて、かちん色といいます。

黒紺色ないし藍黒色で勝色と、鎧や羣装に用いました。

藍の生産地は、徳島県がダントツで1位です、
2位の北海道を大きく離しています。

藍染の染料にはどんな効果がある?

藍染の魅力は、
見た目の美しさや肌ざわりの良さだけではありません。

藍は、
古来より多くの効能を持つ薬草として人々の暮らしを支えてきました。

葉や種には、
ふぐ中毒の解毒や解熱剤として使われるほどの薬効があり、
藍染された生地や衣類は、
虫をはじめ蛇も近寄らないほどの防虫効果

汗臭さが気にならない上にあたたかい、
消臭・保温効果、肌を守る紫外線防止効果などがあります。

最近ではアトピー性皮膚炎への抗菌性も大いに注目されています。

藍の葉は、
ちぎったところから根を生やすほど生命力が旺盛で

・生葉の絞り汁
やけど、口内炎、唇荒れ、腫れ物、毒⾍の刺し傷、
肋膜炎、月経不順、便秘に効果があると言われています。

・葉の煎じ液
解熱、解毒、痔、⿂やキノコの中毒に効果があると言われています。

・生葉、干葉
冷え症の人がお腹の上に置いて寝ると効果がある。

また、頭の上に置いて眠ると安眠効果があると言われています。

・生葉の絞り汁
解熱、解毒、魚やキノコの中毒、精力衰退、腹痛に効果がある。

また、煮出したお茶は
滋養強壮に効果があると言われています。

◆あとがき

染料として使われるイメージの強い藍ですが、
実は“食べる”事もできるとお伝えしました。

栄養価が非常に高く、
昔は解毒・解熱作用のある薬草として
藍商人を中心に食べられていました。

最近では、
生活習慣病に効果があるスーパーフードとして注目され、
食用藍を使用した加工食品や藍の粉末を使って
現代風にアレンジされた“藍フード”を楽しむことができます。

藍を染めるだけでなく、食べて楽しんでみませんか?