加賀友禅の加賀五彩とは、
藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色で、
加賀友禅の基調になっているといわれます。
加賀友禅の歴史は、今からおよそ500年前、
加賀の国独特の染め技法であった無地染の
「梅染」にさかのぼります。
そして模様が施されるようになったのは17世紀中頃。
いわゆる加賀御国染と呼ばれる
兼房染や色絵・色絵紋の繊細な技法が確立されたことから、
加賀友禅は現在の道を歩み始めました。
長い歴史がある加賀友禅の加賀五彩、
染料の種類や京友禅との特徴の違いについてまとめてみました。
加賀友禅の加賀五彩に使われる色は何色?
・加賀友禅とは?
加賀友禅は15世紀の中頃に存在していた
「梅染」が始まりと言われています。
また、加賀には古くから
「兼房染(けんぼうぞめ)」「色絵」「色絵紋」など、
多くの染色技法が伝えられており、
江戸時代には「加賀のお国染め技法」として確立されました。
江戸時代中期に登場した京都の宮崎友禅斉が、
これらの技法を基に、
加賀友禅の技法を確立・発展させたと言われています。
加賀友禅は、
江戸時代に加賀藩による庇護や奨励のもとで育まれ、
数々の技法が専業化されました。
近代に引き継がれた後、
戦前戦後の、
奢侈(しゃし)禁止令などによって打撃を受けた時期を乗り越え、
宮崎友禅斎生誕300年祭の頃を契機に再び栄えていきます。
その後も、
さらなる技術の進歩や、
協同組合加賀友禅染色団地の設立が続き、
1975年(昭和50年)には、
国の伝統的産業工芸品に指定されました。
手描き加賀友禅の工程では、
合理化できる部分もあえて手仕事にこだわっています。
現代も多くの作家や職人が創作活動を行っており、
根気のいる手作業と熟練の技によって
伝統技法が伝えられています。
■加賀友禅の特徴
・絵画調で自然や古典をモチーフにしている
・「臙脂(えんじ)・黄土・藍・草・古代紫」の
加賀五彩を基調としている
・「虫食い」の技法が用いられている
虫食い…自然の葉が虫に食べられているように、
葉の模様にも同じく虫が食べたようにする彩色
・「先ぼかし」の技法が用いられている
先ぼかし…外側から内側に向かってだんだん薄くなるような彩色
・金加工や刺繍は基本的に用いない
そして、加賀五彩とは、
藍、臙脂、黄土、草、古代紫の5色で、
加賀友禅の基調になっているといわれます。
加賀友禅の加賀五彩に使われる染料の種類は?
友禅という呼び方は、
実はその創始者と言われる
宮崎友禅斎の名前からとられています。
この宮崎友禅斎が京都から金沢に移り住んだことが、
加賀友禅発展の契機となっていきます。
元々、宮崎友禅斎は、加賀の生まれで、
1712年 (正徳2年) 、
京都で友禅染を始めた人気絵師の宮崎友禅斎は、
金沢の御用紺屋棟取の「太郎田屋」に身を寄せ、
太郎田屋の当主・茂平と意気投合します。
それまで加賀で行われてきた模様染めを、
共同研究で大きく改善したと言われています。
友禅斎の卓越した意匠構成を実現するために、
特に模様染の基盤となる防染材料の研究が進み、
繊細な模様の表現を可能にする「友禅糊」が誕生しました。
友禅糊の出現によって、
模様染の技術は画期的な飛躍を遂げ、
友禅斎は斬新なデザインの模様染を次々と創案したのです。
現存する最古の加賀友禅に、
東京国立博物館所蔵の「友禅染紫式部観月図掛幅」があり、
この作品の中に、
享保5年の年紀とともに「御門前町茂平」の銘があります。
その後、
金沢では京都とともに友禅技法の伝承と改良がはかられ、
金沢独自の「加賀友禅」が確立します。
意匠を創案する友禅作家が、
弟子を抱えて工房を持つスタイルが定着し、
明治以降も優れた作家が作品を生み出してきました。
しかし加賀友禅の名は、
昭和に入っても、
全国的な知名度はなかったといわれています。
そんな状況を一変させたのが、
友禅作家、木村雨山 (きむらうざん) の登場でした。
1955年 (昭和30年)、
木村雨山が加賀友禅の作り手としては初めて、
重要無形文化財保持者 (人間国宝) に指定されました。
これにより加賀友禅の名は全国に知られるようになります。
長い歴史がある加賀友禅。
加賀五彩が有名なのはお分かり頂けたと思いますが、
加賀友禅の加賀五彩に使われる染料の種類は、
50種類あると言われています。
加賀友禅と京友禅の特徴の違いは?
京友禅と加賀友禅の違いについて見ていきたいと思います。
京友禅は、
京都で確立した技術の刺繍を着物の柄に施せるようになり、
公家文化に生まれた友禅柄に、
絞り、刺繍、金箔などで豪華に加工しました。
加賀友禅は、絞りや刺繍の職人がいなかったこともあり、
手描きだけの技法が発達しました。
加賀藩の武家文化のもとに生まれた技法のため、
模様は図案調が多く、
御所車、扇面、花柄も図案化されていますが、
模様は絵画調で着物全体が絵の様に描かれています。
・ボカシの技法
京友禅は内側が濃く、
外側にいくほど薄くボカシを入れていきます。
加賀友禅は外側が濃く、
内側に薄くボカシを入れることにより、
絵画的な立体感が生まれます。
写実的に、
葉っぱが虫に喰われた様子の虫喰いが描かれる事も特徴ですね。
・糊について
京友禅はゴム糊を使用するのに対し、
加賀友禅はもち米とヌカを原料とした
糯糊を使用することが多い様です。
・染めについて
京友禅は分業制となり、
図案、地染め、色さし、刺繍、箔置きと、
それぞれの分業により着物が出来上がります。
淡い上品な色が多いのも特徴ですね。
加賀友禅は一人の作家により、
図案から仕上げまでを制作するため「落款」が入ります。
「加賀五彩」と呼ばれる
藍、黄土、えんじ、草、古代紫の五色を使用します。
・虫喰いについて
加賀友禅は、自然描写が基本なので、
あえて虫喰いなど綺麗ではないものも柄に入れます。
ただ、
全ての加賀友禅に虫喰いがあるというわけではありません。
京友禅は、図案化された柄なので虫喰いはありません。
・地染めについて
加賀友禅は、先に図案を描いて、
地染めをします。
京友禅は、
先に地染めをしてから図案に挿し色をします。
京友禅は地染めを先に行うこともあって、
ゴム糸目を使います。
加賀友禅は、一人の作家さんが図案を描くため、
白生地から描いて、その後地染めをします。
京友禅は、分業制なので、
図案家、地染め屋さん、色を注す人、刺繍する人、
箔を置く人と、それぞれ違います。
そのため、柄の部分をゴム糊で伏せて、地染めをし、
糊を落とした後それぞれの職人さんに送られます。
加賀友禅は、「加賀五彩」とよばれる藍・黄土・ 臙脂(えんじ)
草・古代紫で、落ち着いた濃い五色を使用します。
そのため、
京友禅よりも沈んだ色調で、
メリハリの付いた配色になります。
そのため、
加賀友禅は写真うつりが良いと言われています。
京友禅は、
全体的に色数を多く使わず、淡い上品な色が中心です。
あとがき
現在の加賀友禅には、
その品質を保つ
「落款 (らっかん) 制度」が取り入れられています。
作り手を束ねる協同組合
加賀染振興協会が品質を認めた加賀友禅には、
手がけた友禅作家の落款がしるされています。
協会の決まりでは、
工房を営む師の元で7年以上の修行を積んで技術を磨き、
加賀染振興協会の
会員2名 (師匠ともう1 名) の推薦を得て
協会の会員資格を得た者だけが、
加賀友禅作家になることができるのです。
そこで初めて、
作り手は落款の登録を許されます。
加賀友禅は、
加賀染振興協会が運営する加賀友禅の文化施設で、
実演が見学できるほか、試着や手作り体験も可能です。
新作加賀友禅の展示や小物の販売などもあり、
加賀友禅の質感を肌で体感できます。
加賀友禅に触れてみたい方は、行かれてみてはどうでしょうか。