着物の種類によって柄や模様の配置の仕方があり、
その着物の柄や模様にはたくさんの種類があります。
それらの柄や模様に付けられた名前には意味があり、
柄や模様は着物を着る季節を表しているものがあります。
一枚の着物はいろんなことを物語ってくれるようです。
素晴らしい着物の柄や模様は、
いつからどのようにして創られてきたのか、
和柄の歴史を紐解いてみたいと思います。
着物の柄の種類や名前の意味
着物の柄や文様には様々な種類があり、
その柄や文様それぞれには意味があります。
お気に入りの柄や文様の意味を知っておくと、
着物の柄を選ぶ時の一つの楽しみになると思います。
洋服にカジュアルやフォーマルがあるように、
着物にも礼装や準礼装、訪問着や街着といった、
着用する場面に適した格式の着物があります。
しかし、格式の違う着物でも、
仕立てるときの形はどれも同じなのですが、
用いられる模様や柄の種類と、その配置は違います。
吉祥文様や有職文様といった格式の高いおめでたい文様は、
黒留袖や色留袖、振り袖などの礼装に用いられます。
黒留袖は絵羽になった裾模様で、『江戸褄』とも呼ばれます。
色留袖も黒留袖同様に裾模様で、上半身に柄や模様はなく、
紋が施されています。
留袖や振袖、訪問着などに施されている模様は、
絵羽模様と言われ、着物全体を一つの画面に見立てているため、
縫い目にまたがって模様が繋がっています。
付け下げは、訪問着より模様が簡略化されていて、
小紋よりは格の高い染の着物です。
訪問着のように絵羽模様ではありませんが、
模様が肩山や袖山で切り替えられていて、
着た時に模様がすべて上を向くように描かれています。
付け下げは訪問着より気軽に着られる着物のため人気が高まり、
上前の衽と上前の見頃の模様を縫い目で繋がるように改善され、
『付け下げ訪問着』と呼ばれる華やかなものもあります。
小紋は全体に繰り返し模様のある型染めの着物で、
稀に手描きのものもありますが、
基本は型を使って染められたものが中心です。
単純な同一の模様を着物全体に散点させた模様を、
飛び柄小紋と言い、
散らし模様に比べて、模様の空間が広いのが特徴です。
付け下げ小紋は、付け下げと小紋の中間の柄付で、
全体に柄を施された小紋ですが、
柄がすべて上を向いています。
おしゃれ着や街着に用いる飽きの来ない柄として、
縞や格子といった柄は、年齢層も広く永く愛されています。
着物の柄の種類で、格子や縞柄には無限大に種類があります。
縞にも縦縞や横縞だけでなく、
木賊縞、鰹縞、微塵縞、子持ち縞、よろけ縞などがあり、
格子には、小格子、斜め格子、弁慶格子、翁格子、千鳥格子、元禄格子など、
まだまだあります。
着物の柄や模様には、
歌舞伎役者の名前が付けられたものが多くあります。
江戸時代の歌舞伎役者は、
民衆のあこがれでファッションリーダーでした。
ですから、人気役者がある縞柄や格子柄を好んで着ると、
その縞柄や格子柄には、その人気役者の名前が付けられました。
役者たちも宣伝を兼ねて、自分をイメージする柄を考案し、
浴衣の柄や手ぬぐいの柄に用いました。
中村格子は、縦横六本の筋の中に、
『中』と『ら』という文字を配して『ナカムラ』を現しています。
菊五郎格子は、『キ』という文字と『呂』という文字に、
九本と五本の縞が交差する格子をデザインして、
『キクゴロウ』を現わしています。
2020東京オリンピックの、
オフィシャルキャラクターで有名になった市松模様は、
佐野川市松という役者が好んで着ていた着物の柄で、
それまでは石畳模様と言われていました。
また、団七格子や弁慶格子のように、
演目の役名が付いた柄や模様がたくさんあります。
着物の柄の種類と着る季節はいつ?
涼しさを感じさせる流水模様は、
夏祭りなどの催し物に適しています。
雪輪や雪持ちの模様は、冬の景色を表しています。
涼しげな麻の葉模様は夏に用いられる柄です。
着物の柄や模様は先取りすることが良いとされているので、
花柄など植物の柄は、花が咲く季節より、
花が咲く前の、
その花が恋しくなるころに着るといいとされています。
植物はその花が咲く季節を表しますが、
ただ季節を表すだけでなく、
その植物から受けるイメージとして象徴することがあります。
中国から伝わった四君子模様があります。
四君子とは、菊、梅、竹、蘭の四つの植物のことで、
菊は長寿を表し、
梅は寒さに耐えて凛と咲く姿を、
竹は真っすぐに伸びる様子を、
蘭はその花が持つ高貴な品格をイメージして、
着物の模様に用います。
松の木は寿命が長いため、長寿の象徴とされていて、
四君子にある梅や竹と合わせて『松竹梅』として、
おめでたさを象徴する模様とされています。
蝶々は蛹から美しい蝶の姿に変ることから、
変化を表す文様として用いられてきました。
桜の花模様は日本を代表する花として、
季節、シチュエーションを問わず用いられます。
日本のかるたの一種で「花札」や「花かるた」と呼ばれるものがありますが、
それらに用いられている絵柄は、
季節に合わせた着物の柄や模様を選ぶときにヒントになります。
一月は松に鶴、二月は梅に鶯、三月は桜、四月は藤、五月は菖蒲(あやめ)、
六月は牡丹、七月は萩、八月は月、九月は菊、十月は紅葉など…
梅雨のシーズンには、雨が降って鬱陶しいので、
きれいな色の紫陽花、
七月八月と夏は暑く、涼しい季節が恋しくなるので、
萩やススキなどの秋草を用います。
色目と合わせて、夏は涼しげに秋を先取りします。
冬は暖かく感じるような模様や柄が好まれたり、
新しい年を迎えると、春の兆しを感じるような華やかな彩や、
美しい花々の模様を用い、春の訪れを待ちわびます。
着物の模様 和柄の歴史は?
着物には、染の着物と織りの着物があり、
それらには美しい柄が施されています。
無地の着物もありますが、
布が織られるときの地紋と言われる地模様もあります。
元々、染や織りの技術は、大陸から伝えられたもので、
飛鳥時代、奈良時代、平安時代初期と、
何度も遣唐使や遣隋使を派遣する中でファッションやデザインについても、
唐や隋など、大陸の影響を大きく受けてきました。
その頃のデザインは、今、韓流ドラマでも見られるようなデザインで、
当時の韓国(百済や新羅)も唐や隋の影響を受けていたことがわかります。
そのころの柄や模様は、
日本独自のデザインではありませんでした。
平安時代になって、日本独自の文化と唐の文化が混ざり合い、
アレンジされたようなデザインが、貴族を中心に広まっていきました。
日本の文化の目覚めとも云うべきそのころ、
ひらがなも誕生し、
紫式部が生きた時代、源氏物語が誕生した時代で、
いろいろなものが日本独自のデザインへと変化していきました。
ですから今、和柄と呼ばれるデザインの起源は、
平安時代以降のデザインが中心となっています。
現在の和柄には、歴史的なデザインを継承しつつ、
自然をモチーフにしたものが多く存在します。
日本人は古来から自然の持つ美しさに惹かれ、
それを着物などにデザインしてきました。
着物に施されている柄や模様には、
日本人が持つ素晴らしい感性が創り上げた、
世界に誇るべきものがたくさんあります。
あとがき
着物に施されている模様は、
季節を表したり、感情を表したり、
日本人の感性のすばらしさにあらためて驚きます。
これほどの素晴らしい表現力を持つ着物は、
私たちの宝物です。
後世へと大切に伝えて継いでいきたいですね。