着物を着たいけど着られない人が着物生活を始めたいなら簡単着物に改良しよう

和裁

着物は着てみたいけど、

着るのが難しくて着られない!
着付け(着るとき)に時間がかかってしまう!
なんとか着ることができても、すぐに着崩れてしまう!

だから、『着物は着てみたいけど着られない』

そう思っている人が多いようです。

ですから、着物着付けという仕事ができたり、
着付け教室というものがあったりするのですが、

着物自体を着やすく改造するという方法もあります。

お手持ちの着物に数か所 ひもをつけるだけで、
簡単に着ることができる着物に
改良できる方法をお伝えします。

  

当時の日本女性にとって着物は日常着だった

明治維新になって、
目の前に『洋装』というものが出現しても、
上流階級の一部にしかその姿は見ることがありませんでした。

まだまだ一般の日本女性にとっては、
見ることさえ珍しい存在だったようです。

当時の日本女性にとって着物は日常着だったので、
着物の着方がわからないという人はいなかったわけです。

もちろん今のように、
着物の着姿を良いとか悪いとか、
そんなことに拘っている暇はなく、
着物を着るしかなかったのです。

洋服は少しずつ日本人の生活の中に入ってきましたが、
日本女性の間で、普段に洋装が用いられるようになったのは、
やはり第二次世界大戦時のことです。


【もんぺ】

戦時中は着物を着飾るということもなくなり、
嫁入りに持たせてもらった着物の多くが食料と交換されたと聞きます。

戦後の復興が進んで、
日常に少しずつゆとりができてきたとき、
欲しいものも買うことができない時代の反動だったのでしょうか、
街の呉服屋さんでは、並べておけば売れる時代があったそうです。

当時はおもしろいように着物が売れた時代があったと、
あとになって聞いたことを覚えています。

テレビや雑誌などのメディアによって、
海外の文化とともに生活様式を知ることになります。

洋装の快適さやデザイン性がもてはやされると同時に、
普段に着物を着るという生活がどんどん遠ざかっていったのです。

着物自体を着やすく改造するという方法


着物はこんな風に作られています。

着物の着方も、
それまでは『お母さんが娘に伝える』当たり前のことだったのですが、
お母さんが着物を着ない時代を過ごしたので、
娘さんに伝えることができなくなってしまったのです。

それなのに、
テレビなどのメディアで見る着物姿は完璧なものが多く、
美容室で着つけてもらうか、着付け教室で着付けを習わないと、
着物を楽しむことはできないような風潮になってしまったのです。

でも、『普段着の着物が着たい!』って思ったときに、
いちいち美容室に出向いて着せてもらうなんて…
という人や、

わざわざ着付けを習わないと着物を着ることができないなんて…
という人もおられると思います。

そうは言っても、着物を着たいという人はおられるようで、
自分ひとりで簡単に着られる着物があればいいのに。。。
というに向けて、
改良着物がいくつか考案されています。

普通に着物を着る時、どこが難しいかを考え、
その部分をいかに楽にできるようにするか工夫されています。

着物の着付けで難しいといわれるのは、
襟袷、すそ袷、おはしょりの3ポイントです。

着物を簡単に着ることができて着崩れしにくく楽な工夫として、
ネット上で見つけた改良着物は、

着物の上部と巻きスカートの分けた二部式きものや、
二部式着物におはしょりを別に作った三部式きもの、
おはしょりのない着物などでした。

確かにこれらの改良着物は、簡単に着ることができそうです。

でも、今まで普通の着物姿と思っていたものと比べると、
おはしょりがないものは、なんとなく見た目に違和感を感じ、
おはしょりの線自体が、
一つのデザイン性を持っていることに気づきました。

また、新しく改良着物を作るのならば別ですが、
今まで持っている着物を改良して簡単に着られる着物を作れないか、
ということを考えました。

もっている着物にちょっと何かをほどこすだけで、
簡単に着ることができ、
普通に着つけた着物と同じように見える
『簡単着物』是非試してみてください。

簡単着物の作り方

着物を一人でうまく着られないという方に、
簡単着物なるものの仕掛けをご披露します。

和裁ができないから…なんて心配しないでください。

雑巾が縫えるくらいの人なら大丈夫です。

★まず、着物に施す仕掛けに使うものを用意します。

①服の上から出かまいません、
ウエスト位置に腰ひもを1本 回して結んで下さい。

②まっすぐに立って、
腰に結んだ紐の位置から床までの長さを測ります。
(これを腰紐位置の高さA㎝とします)

③着物を裏側を上にして広げます。

④裾から腰紐位置までの高さ(A㎝)のところに、
衿から衿まで、糸印を付けます。

⑤ウエスト+50㎝の長さの腰紐 B 1本と、
40㎝の長さの細腰紐 C を2本用意します。

太さは長い方が腰紐くらいの太さで、
40㎝の2本の紐は、少し細い目が良く、
太い方の紐とは色を違えておくと便利です。

⑥細い目の衿先腰紐 D 25㎝を2本と、
7㎝くらいの細い褄上げの輪にする紐 E を2本用意します。

⑦内側腰紐通し G と外側腰紐通し Gを作ります。

幅7㎝で長さ60㎝と30㎝の布(裏地用の生地などが良い)
上下は端を1㎝ずつ折ってアイロンをかけておきます。

両端は三つ折りにして縫っておきます。

⑧裏地用の生地(薄手の生地)
幅12㎝くらいで長さ90㎝程度の布を用意し、
中表に二つ折りにして一辺を残し、
端から1㎝のところをミシンで縫って、裏返して2本の紐を作ります。
(腰ひもを二つに切っても良い)

以上で必要な材料は出来上がりです。

★次に、着物に取り付けます。

1)裏側を上にして広げた着物の糸印のところに、
背縫いを中心にして、両脇縫いの近くまで、
⑦で作った長い方の布の上下を縫い付け、
紐が通るトンネルを作ります。(内側腰紐通し G )

縫い目は隠れるので、しっかりと付いていれば、
多少縫い目が粗くても大丈夫です。

2)裏側のトンネルには、
⑤で作った太い方の腰紐 B の中心に、
40㎝の紐(細腰紐 C )を縫い付け、
その太い紐を上前側のトンネルの入り口から通します。

着物の裏側に通っている太い紐の中心に縫い付けた40㎝の紐は、
背縫いのところで固定します。

3)着物を表返しにして、見えている針目の背縫いから右側に、
⑦で作ったもう一枚の布(30㎝の方)を、
縫い目が重なるように縫い付けます。(外側腰紐通し G )

表側のトンネルには、40㎝の紐(細腰紐 C )を通し、
背縫いに端を固定します。

4)両方の衿先の糸印のところに、
⑥で作った25㎝の紐(衿先腰紐 D )をしっかりと縫い付けます。

5)衿先に付けた紐から下に12㎝下がったところに、
7㎝の細い紐(褄上げの輪 E )を輪にしてしっかりと縫い付けます。
(上前と下前、両方に取り付けます。)

6)襟の肩山から50㎝くらい下がったところに、
⑧で作った伊達締紐 A を、それぞれ衿に対して直角に縫い付けます。

これで着物が簡単に着られる仕掛けは出来上がりです。

あとは着るだけです。

簡単着物の着方

襦袢を着た後、

1,簡単着物の仕掛けが付いた着物を羽織ります。

2,着物の内側に付けた太い方の紐を両手に持ち、
裾を体に沿って持ち上げ、
ウエストの位置でずり落ちないように結びます。
(後ろの裾丈が決まります)

3,右手で今結んだ紐の結び目を抑えながら、
左手で、前に寄ってきた左脇の身頃を後ろに押し返します。

4,左手で紐の結び目を抑えながら、
右手で前に寄ってきた右脇の身頃を後ろに押し返します。

5,下前の襟に付けた紐を、
左身八ツ口から外に出しておきます。

6,下前の衿先に付けた紐を、
すぐ上の輪に通して持ち上げ、一括りしてから、
左脇のトンネルから出ている細い紐としっかり結びます。

7,上前の衿先に付けた細い紐を、
すぐ下の輪に通して持ち上げ一括りし、
右脇のトンネル(表側)から出ている細い紐としっかり結びます。

8,両身八ツ口から手を入れて、
おはしょりの内側の底を撫でるようにして伸ばし、
後ろのおはしょりも伸ばしておきます。

9,左右それぞれ、両方の袖山をつまんで両手を伸ばし、
背中心を揃えます。

10,襦袢の襟に沿わせるようにして着物の襟を合わせ、
衿に付けた両側の紐を、背中で交差させて前で軽く結びます。

これで出来上がりです。

難しくないでしょ?

裾すぼまりのつま先上がり、
おはしょりの船底も、地の目が通ってスッキリしていて、
裾が乱れる心配もありません。

完璧です!

私たちが着物と言っている和服の定義って何?

今、私たちが着物と言っている和服の定義って何なんでしょうか?

和服というのは明治以降に、
洋装に対する和装、
洋服に対する和服ということでできた言葉です。

◎ここからは私が思うところの着物の定義です。

★着物は並幅の反物で仕立てられている

布は、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)を交差させることでできています。

お織りあげる反物の長さの分の経糸を並べて、
その経糸に交互に緯糸を交差することで面を作り布にします。

一般的な反物の長さは、
着物一枚分 約12m50㎝で3丈3尺(振袖以外)

布を織るために緯糸を左右へ送るとき、
ヒトの肩幅で繰り返し動作することが効率よくできるので、
並幅に織られることが多い。

並幅(小幅)約36㎝は鯨尺9寸5分

★着物は、一反の反物を、
衿、袖、上前身頃、下前身頃、衽の長方形に直線立ちし、
それを縫い合わせて作られている。

織の地の目に沿って裁断するので、
生地自体が横伸びすることなく、
布を再利用するとき、いろいろな形に作り変えることができる。

★着物の襟袷は、男女ともに右前

養老三年(719年)に発布された元正の衣服令です。

元正天皇により、
『天下百姓ヲシテ襟ヲ右ニセシム』
“日本人は皆衿を右前に着ること”と決められたのです。

あとがき

世界中にはいろんな民族が存在し、多種多様な民族服が存在します。

その中の日本の民族衣装である『きもの』とは、
平安時代の庶民の間で着られていた小袖が、
日本独自の発展を遂げたものです。

現在では男性は紋付きの羽織・袴、女性は留袖・振袖などが、
正装として使われています。

ですが、
元正の衣服令以外に着物の定義と言えるものは見当たりません。

こうでなければいけないとか、
こうしてはいけないといった着物のしきたりとかは、
(いろいろな思惑があっての)後付けのものが多いようです。

ドレスコードに反していない、他人の気分を害さない範囲で、
個人の表現を楽しむべきだと思います。