小千谷縮とはどんな着物?その特徴と着る季節はいつ?雪さらしって何?

着物の素材

小千谷縮(おぢやちぢみ)とはどんな着物なのでしょうか?
高級着物素材といわれる小千谷縮(おぢやちぢみ)の、
特徴や着る季節について、
また、小千谷縮(おぢやちぢみ)の
雪晒しについてまとめてみました。

小千谷縮とはどんな着物?

越後の国、新潟県では小千谷縮をはじめ、越後上布、塩沢紬、十日町絣など、
たくさんのきものが作られています。

沖縄や京都に次いで染織に携わっている人が多いところかもしれません。

新潟で作られているのは、
その多くが白い糸を染めてから織る織りのきものです。

越後ではかなり昔から越後麻布という上質な麻布が織られています。

当時、原料の麻は山に自生する『山苧(やまそ)』を用いていたようですが、
越後麻布が有名になるにつれて、麻を畑で栽培するようになり、
これを『青苧』と名付けたと言います。

麻布は今ではおしゃれな夏の素材ですが、
当時の麻布は白無地の丈夫な布だったので、
越後の雪深い地方では、一年を通して衣類に使われていました。

寒いので重ね着をしたり、
麻布に刺し子をしたりと色々工夫を凝らしていたようです。

この麻布をアレンジして生まれたのが『小千谷縮』なのです。

小千谷縮ができた起源

江戸時代の中期に、播州明石の浪人、
堀次郎将俊(通称・明石次郎)という人が小千谷に移り住み、
白い麻布を縮ませることに成功したのが始まりとされています。

縮の技法は、緯糸に強い撚りをかけて糊で固定し、
それを織り上げてからぬるま湯で手もみすると、
糊が落ち撚りが戻るので布が縮むというわけです。

小千谷には堀次郎将俊を祀るために建てられた御堂『明石堂』があります。

この中には、堀次郎将俊が家族と縮布を制作している絵が飾られています。

この絵から、彼には妻と娘二人がいて、
小千谷縮を作り出すために家族で頑張った様子が窺え、
ほほえましくなります。

また、明石堂のそばに小さな池があり、
ここで堀次郎の妻、お満が夫を助けて布を晒したそうで、
「お満ヶ池」と名付けられています。

堀次郎将俊が考案した小千谷縮は、瞬く間に全国に広がり、
越後麻布は夏向きの高級着物として、見事に変身したのです。

小千谷縮の製造工程

小千谷地方は平成十六年、新潟中越地震によって大きな被害を受け、
一時は織物づくりもストップしましたが、
今は元気を取り戻し、前向きに動き始めています。

小千谷縮は、糸つくり、絣括り、手織、
すべて人の手が頼りです。

糸つくり=『苧績み』工程
青苧をぬるま湯につけて柔らかくしてから水けをきっておき、
これを口で銜えながら爪と指先を使って髪の毛ぐらいの細さに裂き、
裂いた糸を唾液で湿らせながら指先で繋いでいくという、
気の遠くなるような手間のかかる作業です。

細いところと細井ところを撚り合わせるようにして繋ぐのがコツだそうで、
小千谷縮の場合は織るときに糸に撚りをかけるので、
糸が均一な太さでないと撚りがうまくかからないのです。

苧績みは冬の寒い時期が最適で、青苧は乾燥を嫌い、
湿気のない夏場は糸がプツンプツンと切れて繋げられないのです。

績んだ糸は撚りをかけ、絣括り、染色などを経て、
織りに入ります。

織機に経糸をかけ、緯糸を通し、一本通すたびに絣を合わせながら、
模様を織り出していきます。

重要文化財の小千谷縮は、昔ながらの居坐機で織られます。

織りあがった布は仕上げ加工に入ります。

まず、『湯もみ』をします。

湯もみをする前の生地は糊が付いているため、バリバリの状態です。

これを湯の中で揉んで柔らかくするのです。

職人さんは、この寒い新潟で真冬でも半袖で作業されています。

舟と呼ばれる木製の水槽にぬるま湯を入れ、
反物を両手で押すようにして揉むと、糊がとけて“シボ”が出てきます。

そのあと水気を絞って乾かします。

織りあがった布を雪の上に広げ、お日様にあてることを『雪晒し』といい、
小千谷縮独特の工程です。

人の手によって、手間暇かけて作り出される小千谷縮が、
高級品であることには納得がいきます。

しかし、
小千谷縮はさらさら感が特徴の夏の朝のきもので、
オシャレ義です。

着物好きな人なら、
是非とも一枚はホンモノが欲しいもののひとつです。

小千谷縮の特徴と着る季節はいつ?


小千谷縮や越後上布は夏の着物です。

雪国の新潟と夏のきものという組み合わせが不思議だとは思いませんか?

新潟で作られる越後麻布から始まった北国の織物は、
時代を経て洗練された夏のきものになって行ったようです。

堀次郎将俊という人が考案した製造方法によって、
シボに特徴がある麻織物が作られました。

シボをつけたことで、さらさらとした麻の感触がより高まり、
汗をかいても肌に張り付かないので清涼感は抜群です。

蒸し暑い日本の夏にはまさに最適の素材といえるでしょう。

地球温暖化でますます夏の暑さは激化していきそうですが、
猛暑の中、小千谷縮を涼しげに着こなし街を歩いていたら、
どんなに粋なことでしょう。

日傘など挿してショッピングに街へ出かけてみたいですね。

小千谷縮の雪さらしって何?


小千谷縮最後の工程は『雪晒し』です。

一面に降り積もった雪の上に、
反物を広げてお日様にあてる作業を、
一週間前後かけて行われます。

雪の上に発生するオゾンには殺菌や漂白の作用があるので、
生地は雪のように白くなり、丈夫になって、
絣の色も落ち着きます。

江戸時代から行われてきた『雪晒し』は、
現在もおこなわれているものの、数は減ってきているのです。

小千谷縮は、年月を経て、色が褪せたり汚れたりしても、
再び雪に晒すことで彩鮮やかに蘇り、きれいになるのだそうです。

これを『小千谷縮の里帰り』と呼んでいるそうです。

雪晒しは雪がなくてはできませんので、全く自然任せの作業なのです。

あとがき

夏は暑いからと言って着物を着ない人が多いのですが、
そんなときほど着物を着るチャンスかもしれません。
夏の浴衣もいいのですが、
浴衣姿が多い中、
小千谷縮を着こなして颯爽と歩きたいですね。