そして「“襦袢(じゅばん)”は、外国語です!」というと、
まさか~!って思われるかもしれませんね。
でも、それは本当で、
合羽(CAPA)
天ぷら(TEMPORA)
ひりゅうず(FILHOの複数形)
金巾(CUEQUIN)
などのように、ポルトガル語から転訛した言葉なのです。
“襦袢”という言葉が、一般に使われるようになったのは、
江戸時代になってからのことなのです。
襦袢という言葉が、それまで何と言っていたのか、
どうしてそのような形になっていったのか、
言われてみれば、
知っているようで知らなかったことってたくさんありますね。
そもそも長襦袢とは何で、
何故、長襦袢といわれるようになったのか、
肌襦袢や半襦袢とはどのようなもので、
どうしてそれができてきたのかをまとめてみました。
長襦袢の読み方や由来はなに?
“長襦袢”という漢字の読み方は『ながじゅばん』です。
貞享四年(1687年)刊、井原西鶴の『武道伝来記』に、
「この寒さに襦袢一枚になりて…」とあるのが、
襦袢という言葉が使われている古い例です。
襦袢と呼ばれる以前の肌着は、
装束の単衣(ひとえ)のことで、内衣(ないえ)としての小袖で、
鎌倉時代にはそれは肌小袖と呼ばれていました。
今、襦袢と呼ばれている着物用の下着は、
ポルトガル語のジバン(gibāo)に由来していて、
丈の短い袖なしの、一種の胴着のようなものでした。
長襦袢と半襦袢や肌襦袢の違いは?
その当時、着物用の下着とされていたのは、
丈の短い半襦袢だったようです。
もっとも、この半襦袢は、その後も長く用いられていていますが、
今とは逆に、長襦袢よりも一般的だったようです。
嘉永六年(1853年)版、喜田川季荘著『守貞漫稿』に、
襦袢は肌着なり。
男子及び御殿女中 必ず半身なり。
市中 婦女のみ長襦袢あり。
半身もとなるべし。
しかれども今、
晴には長、褻(け)には半身なり。
中民以下の婦女礼服、晴服の時も半身襦袢を着る。
上輩も時に応じて用立て、
他出の時は袷の女褌(おんなのしたばかま)の形に似たるものを、
女褌の表に重ね着る」
と、あるのは、江戸時代の実情を伝えています。
ただ、女褌の形に似たものを、
京阪では、
「裾除(すそよけ)」「脚布(きゃふ)」
江戸では、
「蹴出し(けだし)」 と、呼んでいました。
つまり、一般には着物の下に、
半襦袢と裾除けが用いられていたのですが、
これが一緒になったのが“長襦袢”だといわれています。
この長襦袢が現れたのは、ほぼ元禄ごろだといわれています。
三田村鳶魚著 『御殿女中続考』にも、
「長襦袢は私娼が着はじめた…」とあるように、
遊女などから流行し始めたようです。
したがって、その生地も羽二重や綸子、絖(ぬめ)などの、
絹物に墨絵や刺繡をほどこされていたようです。
また『守貞漫稿』にあるように、
「表縮緬の緋、紫などの無地、または山繭入、
また絞り、また中型染などあり」
とあるように、大変贅沢なものでしたが、
緋縮緬などは、後には男物にも用いられました。
このように、長襦袢が派手になり、
装飾性が強くなるに伴って、
実用的な半襦袢は、腰切り襦袢とも呼ばれ、
また肌着と別に、半身の肌襦袢ができていったのです。
さらに、夏の汗取りの肌襦袢には、
小さく切った竹の管を繋いだ“管襦袢”とか、
紙縒(こより)製の“網襦袢”
あるいは、
手拭二枚を斜めに組み合わせた
“四手襦袢(よつでじゅばん)”と呼ばれるようなものも生まれました。
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長襦袢は、肌着の上、着物の下で、
インナーの役割をします。
ですが、
袖口やふき、裾などから襦袢が覗いて見えることから、
色合わせや柄など、襦袢にこだわるのもお洒落の楽しみといえます。
肌襦袢は、着物が直接肌に触れて、
体の皮脂などの汚れが着物に付くのを防ぐ役割をしています。
そして、着物を着る時は、
肌襦袢の上に長じゅばんを着て、その上に着物を着ます。
ですから、肌襦袢とは和装用の肌着の一つで、
長襦袢は肌襦袢と着物の間に着る下着のようなものを指し、
季節に応じて体温の調節をする役目もあります。
長襦袢の種類 季節と仕立て方
長襦袢の仕立て方には、
単衣仕立て、袷仕立て、無双袖仕立て、薄物仕立てなどがあり、
仕立て方により、着用季節が異なります。
対丈に仕立ててそのまま着るものが一般的ですが、
長く仕立てて、おは処理をとって着るものもあります。
おは処理を作って長襦袢を着るのは面倒に感じますが、
襦袢の裾は汚れやすく、また、擦り切れることも多いので、
長く仕立てておいて、汚れたり擦り切れた時に、
すその部分を切り取ることで長く着られるようになっています。
袷仕立てと呼ばれる長襦袢は、
着物と同じように、表地に裏地を縫いつけてあり、
12月~3月の寒さの厳しい季節に用います。
袷仕立ては、胴の部分には裏地をつけますが、
袖は襦袢の表地と同じ生地にすることで、
無双袖(むそうそで)にする場合と、
袖の裏にも裏地を付ける場合があります。
袷仕立は昔ながらの仕立てなので、
格式を重んじる場合や、寒冷地で保温目的の場合に多く用いられます。
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お袖だけは無双に仕立てておいて、胴の部分は単衣仕立てにし、
すその返しだけを多めにとった仕立て方を、
胴単衣(どうひとえ)、または胴抜きと呼び、
10月~5月まで、袷の長襦袢として着用できます。
本物の袷仕立ての長襦袢があまり見かけられなくなり、
いまではこの胴抜き仕立てがポピュラーになりました。
胴抜き仕立ての長襦袢は、かさばらないことがメリットで、
着用期間も長くなっています。
胴抜き仕立ての長襦袢=胴の部分には裏地をつけないで、
居敷あてとよばれる腰から下を覆う補強布をつけて、
袖は襦袢の表地と同じ生地で無双袖になっています。
単衣長襦袢は、夏に着用します。
すべての部分にわたって裏をつけず、表地1枚で仕立てて、
折り返しも少なめにして涼しさを優先する仕立てになってます。
単衣長襦袢は夏用ですので、
絽・紗・麻・上布などで仕立てます。
着物は着る季節が決められていて難しいといわれますが、
気候の温暖化など、昔とは条件も違ってきています。
袷の着物は10月~5月
単衣の着物は6月と9月
薄物の着物は7月と8月 とされていますが、
着物の袷・単衣・薄物の三種類と、
長襦袢の単衣か袷かという仕立て方の違いによって、
その組み合わせで、体温の調節をします。
長襦袢の仕立て方は、
これまで関西と関東では、前身頃に違いがありました。
通し襟で、衽のない形のものが関東仕立てとよばれ、
衽のような竪襟がついた形のものが関西仕立てと呼ばれています。
通し襟の場合、
形の特徴から、やや襟元がはだけやすいようですが、
用布が少なくても仕立てられるメリットがあります。
仕立て上がりで販売されている長襦袢は、
関西仕立ての形が多いようです。
◎自分の着丈(着た時にちょうど良い丈)は、
身長ー約30㎝(肩から上の長さ)
着物を着た時に裾から覗かないようにします。
◎袖丈(着る着物の袖丈より2㎝ほど長いもの)
外に着るものほど袖丈を長くすることで、振りから出てきにくくする
◎裄丈(着る着物の裄丈より2㎝ほど短いものを選ぶ)
短すぎても着物を汚すことになり、着ている意味がない。
特に袖幅は着物の袖幅より3~4㎝控える。
◎襟の形も、広襟、撥襟の種類がありますが、
長襦袢の襟はバチ襟の方が着やすいです。
◎長襦袢は着用の前に、襟に半襟を縫い付けておき、
着るときには襟芯を用いて、襟の形を整えます。
長襦袢と半襦袢の違いとうそつき襦袢とは?
長襦袢は着物の下に着るもので、
その長襦袢の下に着るのが肌襦袢です。
それでは半襦袢とは何なのでしょうか?
半襦袢というのは、
長襦袢を半分にしたものということですから、
まず長襦袢があって、
それが半分になって半襦袢ということのように思いますが、
実は逆だったんですね。
歴史的を遡ってみると、着物の中に着る内衣として、
丈の短い袖なしの胴着のようなものと、
女褌の形に似たものを着ていたのですが、
それが一つになって長襦袢になっていったということなのです。
つまり、長襦袢の前身が半襦袢ということになります。
長襦袢に用いる生地には、正絹やポリエステルなどの化学繊維、
ウールや木綿・麻などがあります。
仕立て上がりの長襦袢を購入するときは、
上に着る着物との寸法が合っているものを選びましょう。
反物で購入して仕立てる時は、
用尺を計算して、
必要な分が足りているかを確かめて購入しましょう。
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胴抜きの長襦袢は、胴裏を省いて作りますが、
半襦袢は、お袖と裾除けの生地だけで作れるので、
用尺が少なくて済みます。
長襦袢地が一反あれば、
半襦袢にする、単衣仕立ての袖と、無双袖
そして裾除け用の生地が取れます。
胴の部分や裾除けの腰の部分は、晒を用いて作ります。
これを『二部式長襦袢』とか『うそつき襦袢』というのですが、
夏の薄物の着物の場合は、透けて見えるので、
胴の部分も同じ生地で作ります。
さらに、
袷の着物や、単衣でも透けない着物の場合、
襟襦袢を用いることもできます。
襟襦袢というのは、
『仕立て襟』『うそつき襟』『美容衿』ともいわれるもので、
肌襦袢を着たうえに、この襟を付けて、
襦袢を着ているように見せるものです。
ただし、お袖の部分がありませんので、
襦袢の袖だけを縫っておいて、
着物に直に縫い付けておきます。
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あとがき
以前、着物ショーの着付けをしていた時、
次から次へと着物を着換えていくので、
襦袢まで着替えなくていいように、
襟襦袢だけで対応することがありました。
振袖の場合、お袖に重量感がないように思えて、
あまり良いとは思わないのですが、
時間との勝負なので仕方ありません。
一般の人が普段に着物を着る時、
少しでも簡単に着物が着られる工夫をされていますが、
着物という形をどこまで残すのか、
何故その部分を残さなければいけないのか、
考え出すと夜も眠れません!