半衿と伊達衿の違いと素材の選び方や付け方は?重ね衿やかけ襟とは何?

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半衿と伊達衿の違いをよく訊ねられますが、
半衿と伊達衿は、そもそもまったく違うものです。

半衿と伊達衿がどのように違うのか、
伊達衿や重ね衿はどのように使うものなのか?

素材の選び方や付け方、
半衿と伊達衿や重ね衿、
また、かけ襟とは何かについてまとめてみました。

  

半衿と伊達衿の違いはなに?重ね衿やかけ襟とはどう違う?

まず、伊達衿と重ね衿は同じもので、言い方が違うだけです。

伊達衿(重ね衿)は着物の襟に縫い付けて使うものですが、
半衿は長襦袢の襟に縫い付けて使います。

伊達衿は、きものを二枚着しているように見せるための装飾の役目ですが、
半衿は長襦袢の衿を汚れからカバーする役目を持っています。

ですから、重ね衿や伊達衿がなくても着物を着ることはできますが、
半衿が付いていない長襦袢は着ることが出来ません。

きものを着た時、
衿元の肌に一番近いところに長襦袢の半衿が覗きます。

伊達衿や重ね衿は、長襦袢を着た後、その上にきものを着る時の、
着物の衿に沿わせて衿袷します。

長襦袢の衿や伊達衿(重ね衿)を覗かせる量によって、
雰囲気が変わってきます。

かけ襟というのは、
きもの本体の衿に、仕立てるときに掛けられていて、
きものの生地の一部です。

昔はきものを何度も縫い直しをしたり、洗い張りをしたりして、
長く着ていました。

着物の衿の部分は一番汚れやすいところですので、
初めからカバーするように掛けてあるのがかけ襟です。

長く着ている着物で、衿の汚れが落ちなくなったときは、
かけ襟と本襟を利用して、付け替えるようなこともありました。

ということで、どんな着物にもかけ襟が付いているのですが、
花嫁衣裳には『かけ襟』がありません。

それは、花嫁衣裳を着るということは一度きりのことで、
付け替えたりする必要がなかったからです。???

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伊達衿(重ね衿)とは何? その素材の選び方や使い方は?

着物を二枚重ねて着たように見せるための別衿のことを、
『伊達衿』または『重ね衿』といいます。

あらかじめ着物につけておいて、
きものを着るときに一緒に重ねて用います。

かつて、上等な着物には、
表着のきものと同じ形のものを二枚、三枚と揃えて染めて、
きものを二枚重ねや三枚重ねにして着る習慣がありました。

皇室の結婚式などで見られる十二単は、女房装束と言われ、
高貴な女性の衣裳でした。

その十二単で、五つ衣(いつつぎぬ)と言われる小袖は、
単色のものでしたが、何枚も色の違うものを重ねることで、
四季の様子などを表現していました。

衿元に重なる色の組み合わせで、おしゃれを楽しむ、
現代の伊達衿は、その名残ともいえます。

今でも着物を二枚重ねて着るという風習が、
留袖などの正装に残っています。

本重ねといって、
留袖の下に白羽二重の同じ形をした着物を重ねて着ることです。

今の留袖はその省略形として、裾まわりや袖口・振りなどに比翼を付け、
白羽二重の比翼襟を伊達衿として着付けることが多くなりました。

つまり、伊達衿は留袖の比翼のように、
裾周りや袖口、振りなどには付けませんが、
伊達衿は比翼衿を簡略化したものです。

そのため、
本来は振袖や訪問着、色無地や付け下げといった礼装用の着物に用います。

今はおしゃれの表現として、小紋などの染の着物にも使うことはありますが、
織りの着物に用いることはありません。

伊達衿の素材は、羽二重や綸子、塩瀬、縮緬などを用い、
柄は絞りや江戸小紋などの特殊なものもありますが、
無地のものや地紋入りのものが一般的です。

さらに表と裏で違う色の組み合わせで作られているものもあるので、
きものの生地の材質や、雰囲気に合わせて選びます。

その際、最もポイントになるのは、何といっても“色”です。

上品に装いたいのなら、きものと同色か同系の薄い色を用い、
華やかに装いたいのでしたら同系の濃い色や補色を用います。

また、帯揚げや帯締めに合わせて、
衿元を引き締めるのもお洒落ですし、
平安朝の色襲(いろがさね)のように、衿元で季節を表現するのも楽しいでしょう。

きものがバチ衿の場合はそのまま、
きものが広衿の場合は、
着物の衿を、自分にあった幅でバチ状に折って縫い留めておきます。

伊達衿(重ね衿)は、着物の衿の内側に沿わせて縫い留めておくと、
きものを着る時、楽に衿あわせが出来ます。

伊達衿(重ね衿)は、3寸幅の広いものと、
1寸3分~4分幅程の狭いものがあり、
広いものは着物の衿と同じように折って使います。

伊達衿(重ね衿)の長さは、
衿あわせの紐に架かる方が衿元が崩れにくいので、1m程必要です。

伊達衿を衿元のアクセントのひとつと考えると、
おしゃれの幅が広がります。

伊達衿(かさねえり)をきものに縫い留めるときは、
背中心のところで着物の衿より5㎜控え、衿肩明き止まりで同寸にし、
着物の衿から2分~3分(5㎜~8㎜)覗かせるようにして縫い留めます。

半衿とは何? その素材の選び方や使い方は?

半衿の基本は白です。

刺繍の半衿や色の半衿は、TPOで使い分けをしましょう。

衿元のお洒落は、着物姿の重要なポイントです。

半衿は長襦袢の衿の部分に縫い付けますが、
きものの衿に汚れが付かないようにカバーするだけでなく、
きものと肌との間にあって、
きものの色や柄をより強調させる役目も果たしています。

半衿には、大きく分けると、白の半衿と色の半衿がありますが、
かつて白はよそゆき用で、色物は普段着用とされていました。

しかし現代では、正装やよそゆき用だけでなく、
普段着用も白い半衿が主流になっています。

半衿の素材は豊富で、
袷のきものには、
塩瀬や縮緬、綸子、東雲、明雲、ふくれ織り、唐織、紋意匠縮緬などがあり、
塩瀬は礼装用から日常着まで、幅広く用いられます。

単衣の着物の場合、絽の着物には絽、紗の着物には紗または絽、
麻の着物には麻、紬や御召などには絽縮緬を用いると、
きものが生き生きとしてきます。

色の半衿や刺繍の半衿は、衿元を華やかに見せるのに効果的ですが、
TPOに合わせて上手に使い分けるようにしましょう。

たとえば、留袖や振袖、訪問着などの礼装用には、
色半衿は不向きで、あくまでも白が正式です。

色半衿は地味な着物を明るく見せるためのものなので、
紬や木綿の着物に適しています。

友禅染や絞り、無地などの色半衿を、
きものの色や柄との調和を考えながら合わせるとお洒落です。

刺繍の半衿は、
普段着用から礼装用まで豊富です。

白地に白糸や金糸銀糸でおめでたい柄を刺繍したものは、
留袖や訪問着などの礼装用に、

色の半衿に刺繍をしたものは、
普段の着物や紬などのお洒落着によく合います。

長襦袢の衿に、半衿を掛けるときは、
内側にシワがよりやすいので、
半衿を攣り気味に縫い留めます。

あとがき

長襦袢の半衿は肌に一番近いところにあって、
汗などの汚れが付きやすいのです。

ですから半衿は、ほぼ毎日取り換えたいのですが、
長襦袢に半衿を掛けるのは、なかなかメンドクサイものですね。

普段着用の化繊の長襦袢には、これまた化繊の半衿が付けたまんま、
近頃の化繊はなかなか通気性の良いものもできて、
まるっと洗濯機で洗えて、
ダラ干ししておけばアイロンも不要の優れものがあります。

伊達衿や重ね衿はアクセサリーのようなもので、
付けることで着物の雰囲気をガラッと変えてくれます。

それらはすべて、衿元のお洒落を極めるもので、
その人の第一印象まで変えてくれるかも知れません。

うまく使いこなせることが出来れば、
着物はさらに何通りもの楽しみ方が出来ます。